研修会時の質問【令和3年7月3日 開催分】

【講義名】採血業務における注意点~採血管の取り扱いと検査値への影響~

【回答者】金田 幸枝 先生 (積水メディカル株式会社)

 

Q1:乳房切除側の腕、下肢の血管からの採血を避けたほうが良い理由を教えて下さい。

 

A1:標準採血法ガイドライン(GP4-A3)のQ&A-8(41ページ)に詳細な記載がありますので、そこからポイントを抜粋し、以下記載します。「乳癌の手術では所属リンパ節を広範に郭清する術式が一般的に用いられており、患者の腕で採血した後のリンパ浮腫やそれに伴う感染の発生かしばしば認められたため」です。ただし、近年はセンチネルリンパ節のみの切除を行い、他の所属リンパ節を温存する術式が一般的となり、患側の腕の採血でもそのような危険因子にならないとの報告もあるのですが、比較的エビデンスレベルの高い前向き研究で、乳癌術後患者の患側の腕の採血により、リンパ浮腫のリスクが2倍程度増加するという報告があり、米国のCLSIが発行した採血法ガイドラインでも、乳癌術後患者の患側の腕での採血は避けるべきであるとしています。以上より、標準採血法ガイドライン(GP4-A3)ではそのように記載されています。なおガイドラインには「ただし、両側乳房切除後の患者や健側の腕からの採血が困難な患者において、患側の腕での採血と下肢等の代替部位からの採血とでどちらが安全かについてはエビデンスが示されていないので、採血部位については担当医に確認を行うなど、患者ごとに適切な対応を行うこと」ということも記載されていますので、ご留意ください。

 

 

Q2:採血後の検体を37度のヒートブロックを使って加温した場合、生化学項目に影響は出ますか?また出るのでしたらどれぐらいの時間なら加温しても大丈夫ですか?

 

A2:ヒートブロックではありませんが、加温での安定性を検討された資料がありました。H30年度日臨技 関甲信支部・首都圏支部 医学検査学会で東京都立墨東病院から発表された抄録で、詳細データはわからないのですが、TP、Alb、UN、Cre、UA、TB、Na、K、Cl、Ca、iP、Mg、CK、AST、ALT、LD、ALP、GGT、ChE、Amy、IgG、IgA、IgM、C3、C4、CH50、CRP という項目の中で、37℃であれば120分まではCH50以外は問題なさそうです。


2021年07月11日