Q&A

研修会時の質問【令和6年1月13日分】

【講義名】梅毒検査を実施するうえで知っておきたいポイント
【回答者】石井 葵 先生(積水メディカル株式会社)

 頂いたご質問に対する回答は、弊社製品「メディエースTPLA」「メディエースRPR」に関する知見に基づいたものです。ご了承のほど、よろしくお願いいたします。

Q1. PCRは保健所しかできないと聞いたのですが、臨床症状だけで活動性梅毒と判定する医師はいらっしゃるのでしょうか

A1. いらっしゃらないと思います。梅毒は「偽装の達人」といわれるほど様々な症状を呈しますので、検査値による確認が必要です。また初回の検査値(定量値)がないと、投薬後の治療判定が困難になりますので、臨床症状と検査結果で診断するよう性感染症診断・治療ガイドライン2020に記載されています。(スライドNo.10をご参照ください)PCR検査は現時点(2024年1月13日時点)で保険点数が未収載であり、操作も煩雑であることから、国立感染研や大学病院など一部研究機関での活用に限られています。

活動性梅毒の診断基準は、性感染症診断・治療ガイドライン2020(スライドNo.9)に従い、臨床診断だけでなく、検査値とその推移で判定されます。
 【症状がある場合】①TP-PCR陽性、もしくは②TP抗体、RPRが陽性であり、病歴と検査値の推移から活動性と判断されるもの
 【症状がない場合】TP抗体陽性で病歴と検査値の推移から潜伏梅毒と判断されるもの


Q2. TP抗体試薬は、定性のものを使っています。(+,数値で結果が出てきます)治療効果判定で使ったとき、定量で保険点数の申請をしていいのでしょうか

A2. 保険点数の申請が可能かは、キットの薬事申請時の届け出区分によります。よって、メーカーにお問い合わせいただければ幸いです。


Q3. アモキシシリンの内服とステイルズ筋注はBCP改良法による血中アルブミン測定において負誤差の原因となるでしょうか

A3. 原理的に、BCP改良法では、ペニシリン大量投与時にALBの偽低値が生じます。1日2,400万単位(1,800~3,000万単位)のペニシリンGを6回に分けて投与し、4週間治療した患者様での症例で、BCG法とBCP改良法では、3.4g/dLが1.7g/dLとなったと報告されています(栢森裕三, 他 薬物による検査値の変動 3.生化学・免疫検査.Medical Technology(2009) vol.37 no.8 p818-822)。また、弊社のBCP改良法は10万単位で10%程度低値化することを確認しています。内服時には、血中濃度が急激に上昇することは少ないため影響は低いかと思われますが、ステルイズ筋注では(調べました)、最高血漿中濃度到達が48時間、約259ng/mLに達します。半減期は188.8時間、目標有効濃度(18ng/mL)以上を維持した期間の中央値が約23日(範囲:18~25日)となっています。検査値への影響に関しては添付文書への記載はなく、どのくらいの影響が出るかについては現時点では不明ですが、上記の情報もご参考にALB値を見て頂ければ幸いです。


Q4. 脂質抗体検査とTP抗体検査の順番についてですが、メーカーからの推奨はありますか

A4. スクリーニング検査としては、コストや特異性を勘案していずれか1法で実施されているご施設が多いですが、昨今の梅毒の流行を鑑みますと、できる限り同時測定をお勧めします。まずはどちらかというのであれば、個人的にはTP抗体を先に測定することをお勧めいたします。梅毒に対する特異性が高く、メディエースの場合、初期梅毒に対する感度が良好であるためです。必ず症状や問診で病歴等を確認いただくようお願いいたします。


Q5. 活動性梅毒に関してですが、ガイドラインではRPRでの届出となっていましたが、現在、TP抗体が先行して陽性となる場合もあることからRPR陰性またはRPRの値が低値でも活動性梅毒と疑わしい場合には届出が必要と解釈し医師へ説明した方が良いのでしょうか。積水さんにも連絡が行くと仰っていましたが、どのような問い合わせでしょうか

A5. 活動性梅毒(要治療の対象)の結果と届出の条件は、すべて一致はしていません。
弊社にも「活動性梅毒の対象の確認」「届け出の対象の確認」のお問い合わせを多数受けています。
現状は活動性梅毒の一部が、統計上届出に必要な対象となっておりますので、再度スライドのNo.9、11を比較してご確認ください。

活動性梅毒(要治療例)でも以下の場合は届出不要です。(でも治療は必要です)
 ・症状がある場合でも、RPRとTP抗体がいずれも陽性でない場合
 ・症状がない場合、RPRが16倍相当未満の場合
  (届け出ても「該当しない」と除外されます)


Q6. 神経梅毒が疑われる場合に、髄液でTP抗体やRPRの検査を行いますが一般的なのでしょうか。保険請求は血清・髄液のどちらもできるのでしょうか

A6.「髄液」は現在国内で販売されている体外診断薬では保険請求できるものはありません。残念ながらメディエースも髄液の測定での保険請求は現在できません。なお、日本には神経梅毒の明確な診断基準はありません。

CDCの診断基準では確定診断としては、①神経梅毒に一致する症状がみられる、②髄液VDRL陽性、③髄液の細胞数が5-10mm3以上、④タンパクが45mg/dL以上です。日本ではこれを参照に、①、②髄液VDRLを髄液RPR陽性と読み替え、および③で運用されているご施設があります


Q7. 通常血清と髄液をダブルで検査を行うのですが、① 血清の方が高値という検査結果が臨床的に正常でしょうか。② 治療効果判定のためにはどこまでも希釈を行い、数値で報告することが重要とお考えでしょうか。それとも施設で話し合って不等号での結果報告もありとお考えでしょうか。

A7.① これまで確認した例では血清>髄液の場合が多いですが、定性値での報告も多く、すべてそうとは断定できません。また髄液中のRPR、TP抗体の由来は不明です。② 不等号での結果報告では測定値の変動がわかりませんので、定量値での報告をお願いします。
また高齢の方で陳旧梅毒か、活動性梅毒かを見極めるにも、期間を空けての測定値の比較が必要ですので、不等号での報告では区別がつきません。あらかじめ高値とわかっている方は、希釈を高倍率から始めるなどしてご負担を減らしていただければと思います。


Q8. 血清や髄液以外にも、TP抗体やRPRの測定ができる検査材料はありますでしょうか

A8. 血漿も可能です。(メディエースは血漿・血清で測定できます。)


Q9. RPR(+),TP(-)のときFTA-ABS(-)であれば梅毒は否定してもいいのでしょうか

A9. RPRが偽陽性やBFPの可能性があるか、患者背景を確認してください。また、まれにRPRが先行して陽性化する場合もありますので、感染の機会があったり、症状があり疑わしいような場合には、再度期間をおいてご測定ください。


Q10. 非特異的反応などの確認や、治療効果の経過を見ていく中で、前回値をチェックする上で、どのくらいの期間を目安に確認する必要があるでしょうか

A10. 治療前や治療中は、2週間から4週間の期間をおいて再測定することが推奨されています。治療後のフォロー期間は議論の分かれるところですが、4週間おきに1年とされるご施設がありました。


Q11. RPR(+),TP(-)でRPR陽性が梅毒によるものかBFPによるものかを判別するために医師へすすめるべき追加検査があれば教えてください。

A11. RPRのBFPや非特異に関しては、測定原理の異なるカード法でご確認ください。TP抗体も使用抗原や測定原理による違いがありますので、FTA-Abs法など他法でご確認ください。

2024年01月20日

研修会時の質問【令和5年9月30日分】

【講義名】苦手克服!臨床検査技師が知っておくべき血液ガス分析~応用+症例編~

【回答者】濱田 宏輝 先生(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティックス株式会社)

Q1. 分かりやすい講義ありがとうございます。前回出席してなかったので重複していたらすみません。血ガス測定した時にPaO2が100以上と高い場合や、患者の状態がそこまで悪くないのにCO2が高い場合があり、正しく測定出来ているか心配になる場合があります。正しく測定出来ているという自信をつけたいのですがポイントはありますでしょうか?

A1. 正しく測定できているという自信を得るためには、まずはガイドラインに添った検体の取扱いができているか(保存温度、時間、攪拌など)をご確認頂くことが重要かと思います。

PaO2が100以上と高い場合
患者さまの酸素投与状況(FIO2)をご確認いただくこと。その上でP/F比から是非をご確認頂く必要があるかと思います。

患者の状態が悪くないのにPaCO2が高い場合
まず、検体採取時の患者状態が悪くなくても、慢性的にPaCO2が高い患者様もいらっしゃいますので、過去の病歴までご確認頂けるとよいかと思います。検体採取後の変化としては血球代謝により高値となっていく傾向があります。特に白血球数が高い場合などでは上昇度合いは大きくなる可能性がありますのでご注意が必要です。


Q2. 血ガス測定する上で静脈か動脈かを見分けるポイントを教えていただけると幸いです。

A2. 検体の外見上、動脈血は鮮紅色、静脈血は少し黒ずんだ紅色になりますので測定前にご確認頂くこともひとつの手段になります。測定値から判断する方法としましては、オキシメータ搭載機での測定であればO2Hb(酸素化ヘモグロビン)とHHb(還元型ヘモグロビン)の割合から予測することもできます。この場合、静脈血は動脈血に比べて明らかにO2Hbの割合が低下し、HHbの割合が上昇します。


Q3. 大変貴重なご講義、症例大変にありがとうございます。当院では測定前に必ず数滴捨てて凝固塊がないかどうか確認の上測定を実施しています。稀にですが、シリンジ先端に凝固塊があることもありすぐ取り除いてとりあえず測定してみます。もちろん凝固塊が少しでもあれば取り除いたとしても他にも凝固塊が存在している可能性もあり装置を詰まらせる原因にもなるので測定しないほうがいいと思いますが、救急外来の検体でもあったりするのでとりあえず測定してみますが、凝固による測定データの影響は何かありますでしょうか?少しでも凝固塊があった場合は測定できたとしても結果は無効とした方がよろしいでしょうか?ご教授いただければと思います。よろしくお願いします。


A3. サンプル中に凝固塊がある場合、ある程度の大きさであればサンプルアダプター(注入口に装着されている取り換え可能パーツ)でキャッチ可能となっていますが、サンプルが測定ルート内に入った後に凝固してしまうといケースも稀にございます。その場合はどの電極付近で凝固がおこるのか予測が難しく、測定データにどのような変化が起こるのかも判断が難しくなります。対策としては、検体測定後の検体についても測定前と同様に凝固がないかご確認頂き、わずかでも凝固を認める場合は再採取、再測定頂くのがよろしいかと思います。


Q4. 最近整形の医師より、オペ中の血ガスのHbと翌日のCBCのHbの差が大きくて輸血の目安にならないが、何がこんなに差が出るのかと言われました(約2程度血ガスが低い)。血ガス測定時の撹拌が悪いのか、採取場所なのか原因がわかりません。何度か起きている事例なので手技かと思いますが、血ガスのHb値で輸血行う指標とすることはどう考えてもらうべきなのでしょうか。

A4. Hb値に関しては血液ガス分析ではCOオキシメトリー法によって酸素運搬能評価のためにO2Hb、HHb、MetHb、COHb分画の全てを測定し、その合計値としてtHbを算出しています。一方CBC装置では造血状態の評価として赤血球内の全てのヘモグロビンを比色定量しています。両者を比較した場合、血液ガス分析でのtHb値がCBCよりやや高めに出る傾向があります(ただし、メーカー間差、機器間差がある可能性がありますので他社装置での傾向については担当者にお伺い頂ければと思います)。輸血の指標については上記のような理由から基本的にはCBC装置をご使用頂くことを推奨しております。


Q5. 貴重なご講義ありがとうございます。検体採取後の保存は常温保存と氷冷保存どちらが良いでしょうか。

A5. 基本的には常温保存が推奨されています。ただし、採血から測定まで30分以上のお時間がかかる場合は氷冷保存についても考慮下さい。氷冷保存をされる場合はK値の偽高値には注意が必要です。


Q6. 分かりやすいご講演ありがとうございました。PaCO2、PaO2、HCO3などが基準値範囲外であるのに、pHが正常範囲の場合がたまにあるのですが、どのように考えれば良いのでしょうか

A6. PaCO2(呼吸性)とHCO3-(代謝性)は、どちらかに異常があった場合に互いを補い合う関係にあり、この反応を代償反応といいます。例えば、HCO3-が低下して代謝性アシドーシスになる(pHは低下)場合には、代償反応としてPaCO2が低下し、結果的にpHは上がり、pHが基準範囲内に入ることもあります。ただし、代償反応によって7.40を超える(代謝性アシドーシスの場合7.40より大きくなる)ことはありません。よって、pH値には騙されず、PaCO2とHCO3-両方の結果を確認することが重要になります。また、PaO2はpHに関与することがありません。


Q7. 貴重な講義ありがとうございます。当院では臍帯血での血液ガス検査が高頻度にあるのですが、注意すべきことがあればご教授頂きたいです。よろしくお願いします。

A7. 一般的に臍帯血は高CO2の状態であり軽度のアシドーシスがあります。ここに低酸素や虚血などがあると代謝性アシドーシスを合併することでさらにアシドーシスが進行します。この重度のアシドーシスの有無を評価することが臍帯血で血液ガス分析を行う目的になります。また、検体の取扱いについては、キャピラリーを用いられることが多いかと思います。注意点としては検体凝固や攪拌不足による濃度勾配はヘモグロビン値に影響するため、採血後すぐに測定できない場合は攪拌子を入れてゆっくりと、十分に転倒混和をすることが重要になります。検体の保存方法や保存可能時間などについてはシリンジ検体と同様の取扱いが推奨されています


Q8. 分かりやすい講演ありがとうございました。血液ガスは、採血体位によってデータが変化することはありますか?

A8. 肺炎など肺に器質的疾患を持つ患者さんでは体位によって酸素化の結果が変化することがあります。具体的には肺の病変部位を下にした場合、血流が多くなる下側で酸素化が悪くなり、逆に肺の正常部分を下にした場合には酸素化の結果は良くなります。
肺に異常がない患者さんでは、座位と立位、仰臥位と伏臥位での血液ガスデータの差は出ないと思われます。


Q9. 血液ガス測定器で測定される電解質についてですが、生化学分析器で測定した(血清で測定)データと乖離することが時々あります。全血と血清、測定方法の違いもあると思いますが、ほかに原因はなにがありますか。

A9. 仰るように、血液ガスと生化学では電解質の乖離が起こることがしばしばあります。原因としては様々ですが、まずは血液ガス検体と生化学検体の採血タイミングや採血部位が同じかどうかをご確認頂くことが必要かと思います(実は低値であった方はルート内から採血だった場合など)。その上で、同一検体の場合での項目ごとに乖離が起こる原因がいくつかあるかと思います。いくつかの例を下記に挙げさせて頂きます。

乖離例
ナトリウム:蛋白、脂質高値検体での容積置換の影響(生化学検査の偽低値)
カリウム:血小板高値検体での生化学検体遠心時の溶出(生化学検体の偽高値)
クロール:臭化カリウム=ブロム含有薬の使用(血液ガス分析の偽高値


Q10. 濱田先生に勤務先の病院に来ていただいて講演していただくことはできるのでしょうか?

A10. ご要望ありがとうございます。ご施設の弊社担当営業、もしくはコールセンターにお声がけ頂ければご対応させていただきます。


Q11.一度でうまく測定できなかった際に同じ検体で再検すると値が変わったり変わらなかったりするのですがなぜでしょうか。大きく変わった場合どちらの値を信用すれば良いでしょうか。

A11. 「うまく測定できなかった」状況と内容にもよると思いますので一概にどちらが正しいとは言えないかと思います。ただし、エラーがなく測定できたとしても気泡が混入していた、攪拌が十分ではなかったなど誤った取扱いがあれば、信用できる値ではなくなってしまうかと思います。


Q12. 検体が少量の際、シリンジの内筒を外筒から外してキャピラリー管に血液を採取後、検査しても問題ないのでしょうか?

A12. 基本的には問題ないかと思います。ただし、検体を移す際に大気に触れてしまうこと、キャピラリー管にも空気が入らないようにご注意いただき、十分転倒混和後に測定いただければと思います。


Q13. 貴重なご講演ありがとうございます。生化学分析装置でのCl値と血液ガスでのCl値と乖離する事がありました。血液ガスが高値となりました。HCO3-が影響しているようですが、どのような仕組みでしょうか?教えてほしいです。

A13. Cl値が生化学よりも血液ガス分析で高値との事ですが、可能性としてはHCO3-が影響していることよりも、Cl自体を偽高値にする要因があったことが考えられます。A.10もご参照頂ければと思いますが、臭化カリウムなど血液ガス分析でのCl値に影響する薬剤使用の有無がなかったかどうか、ご確認頂ければと思います


Q14. とても貴重な公演ありがとうございました。心臓カテーテルで、サンプリングの検査をするときに血ガスをどんどん採取するのですが、測定は1本ずつでどうしても検体が溜まってしまいます。なるべく正しい値を臨床に提供したいのですが、検体が溜まってしまうときは、ずっと攪拌している方が良いのでしょうか。それとも測定前の十分な撹拌が良いのでしょうか。

A14. ご質問のような状況を想像すると、他の業務と並行しながら複数の検体を攪拌し続けるというのは現実的ではないと思われます。また、測定直前の攪拌作業は検体を均一にするためのものであり、測定までの間継続して攪拌し続ける必要はないかと思います。ただし、放置時間が長くなる場合はその分十分な攪拌が必要になると思われます。


Q15. 今日は分かりやすい講義ありがとうございます。血液ガス分析において、動脈血測定が主ではありますが、静脈血で測定する方がいい代表的な症例はありますでしょうか?

A15. 症例によって静脈血の方がよい、という症例はないかと思います。ただ静脈血で測定でも代用可とされる状況としては、具体例としては糖尿病性ケトアシドーシスの場合、呼吸状態は安定していて酸塩基平衡だけを確認したい場合、既に動脈血で呼吸状態については確認済みで酸塩基平衡、電解質、Hb値など治療過程のフォロー目的として血液ガス分析を行う場合、動脈採血は侵襲を伴うので、その侵襲を加えることが難しい、もしくはそれほどでもないと判断される場合、などが考えられるかと思います。


Q16. 腎臓内科から提出される血液ガスは何の評価を目的とされているのでしょうか?

A16. 腎臓内科で提出される血液ガス分析では、目的の1つとして病期の進行の有無や程度を見ていることがあります。具体的には中等度腎不全ではAG非上昇型代謝性アシドーシス、高度腎不全ではAG上昇型代謝性アシドーシスとなります。また、透析患者では腎からの酸排泄ができないため常にアシドーシスの傾向があり、透析時に透析液によって補正されます。具体的には透析直前にはHCO3-が低値となり、透析直後はHCO3-を補充したことにより代謝性アルカローシスの状態になります。


Q17. 貴重なご講演ありがとうございます。当院では産婦人科とNICUにもシーメンスさんの血ガス機器を使っているのですが、産婦人科とNICUの患者様に対してのLacと結果の解釈また考え方をご教授していただきたいです。初歩的な所で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

A17. 細胞への酸素供給が不十分、もしくは組織への血流が低下している場合にLactateが上昇します。産生されたLactateはAG(アニオンギャップ)に含まれる物質ですのでAG上昇型の代謝性アシドーシスを起こす原因物質にもなります。よって、NICUではLac高値=乳児の低酸素症と考えられることができ、またlactate値の大きさは重症度とも関連があるとも言われています。


Q18. 基本過ぎる質問ですみません。空気を抜くため少し血液を捨て、1分混和後測定しています。1分混和後はもう血液を捨てず測定して大丈夫でしょうか?そもそも血液量が0.5mlと少ない事がほとんどで空気を抜く時もどばっと出てしまいそうで怖いです。

A18. 測定直前に捨て血をする目的は凝固血を機器に注入しないための最終確認になります。よって、1分混和後に測定頂く直前にも捨て血をして頂くことがより安全であると言えます。ただし、仰るように検体量が少ない場合には優先すべきは測定することになりますので、捨て血まではせずに転倒混和しながら観察していただくなどの方法でもよいかと思います。


Q19. わかりやすいお話しありがとうございました。当院では静脈採血で,腎臓内科から血液ガス依頼がよくでます。慢性的に腎臓が悪いのですが,アシドーシスにもかかわらずHCO3が高めです。こういう患者が多いのですが,代償されているのでしょうか?
検査の採血室で採血する元気な患者さんです。

A19. アシドーシスにも関わらずHCO3-が高めとのことですが、PaCO2の値はいかがでしょうか。PaCO2高値によるアシドーシスに加えてHCO3-が高いようでしたら何らかの肺疾患を合併した呼吸性アシドーシス+代謝性代償とも考えられます。また、CKD患者では尿からのHCO3-排泄低下や、利尿薬などの薬剤によってHCO3-が上昇し代謝性アルカローシスを合併することもあります。pH値は様々な要因が重なった最終結果ですので、一見アシドーシスに見えても実はアシドーシスとアルカローシスを合併していてアシドーシスのチカラが勝っている結果としてアシドーシスに見える、ということも考えられるかと思います。

2023年10月02日

研修会時の質問【令和5年5月20日分④】

【講義名】オートタキシン活性測定のご紹介
【回答者】北川 寿仁 先生(富士フイルム和光純薬株式会社)

Q1.Fib-4 indexが病態を反映しないような数値(偽高値や偽低値)を示す場合に、年齢以外の原因として何があげられるか教えていただきたいです。

A1.下記の文献では、FIB-4 IndexやNAFLD fibrosis scoreが若年や肥満、2型糖尿病の有無の存在下で診断能が低下することが指摘されています。一方で、2型糖尿病合併非肥満NAFLD患者ではそれらの診断能が最も高くなることが分かりました。

Poor diagnostic efficacy of noninvasive tests for advanced fibrosis in obese or
younger than 60 diabetic NAFLD patients.
Clinical Gastroenterology and Hepatology 2023;21:1013–1022


Q2.悪性リンパ腫で高めになる原因はどのような事が考えられますか?

A2.下記の研究では、自動酵素免疫測定法を使用して、血液悪性腫瘍患者の血清ATX抗原濃度を測定し、濾胞性リンパ腫(FL)患者の血清ATX抗原レベルが健常者よりも有意に高い結果となりました。さらに、FL患者の白血病腫瘍細胞はATXを発現することが示されました。
これらの結果は、リンパ腫細胞からのATXの放出が血清ATX濃度の上昇につながることを示唆するものとして考察されています。

Serum autotaxin measurement in haematological malignancies:a promising marker for follicular lymphoma
J Haematol. 2008;143(1):60-70.


Q3.ATXはCKMBのように濃度値での結果報告はできないのでしょうか?(濃度値でのカットオフは使用されていないのでしょうか)

A3.蛍光酵素免疫測定法、化学発光酵素免疫測定法の測定キットでは濃度値での報告が可能です。ご紹介しました弊社酵素法の測定キットでは活性値での報告が可能です。カットオフの単位は使用される測定キットの報告単位と同一である必要があります。

2023年05月27日

研修会時の質問【令和5年5月20日分③】

【講義名】免疫測定法の基礎
【回答者】福辻 真由 先生(富士フイルム和光純薬株式会社)

Q1.Fab部の抗原結合は理解できましたが、CHのどこを認識して発光物質(抗原)がくっついているのですか?標識抗体がFcを抗原として認識して結合していると言うことでしょうか?

A1.大変申し訳ありませんが、標識抗体の製造方法に関与する部分となりますので、お答え致しかねます。一般的には、標識物質を抗体に結合させる方法として、①抗体内のアミノ基(NH2)につける方法や、②抗体のヒンジ領域を切断し、還元した抗体(還元抗体)のチオール基(SH)につける方法、等がございます。

2023年05月27日

研修会時の質問【令和5年5月20日分②】

【講義名】乾式臨床化学分析装置の仕組み
【回答者】高吉 尚子 先生(富士フイルムメディカル株式会社)

Q1.スライドにありました「マトリックス」とは何か、について教えてください。

A1.測定する試料中の、測定対象物以外の物質が測定に際して測定法に干渉し、何らかの影響をもたらす現象の総称。ドライケミストリーだけでなく、液体法試薬でも発生する。(菅野剛史先生、第22回日本臨床化学会冬期セミナー抄録集より引用)


Q2.ドライケムは人間用と動物用は、中身は同じものですか?

A2.基本的には同じですが、全項目同一ではありません。


Q3.ドライケムAU10Vを使っています。プロゾーン現象などは起こり得ますか?

A3.起こり得ないと断言できませんが、経験がありません。尚、約4年前より動物関連の製品は別会社で取り扱う事となり、それ以降、AU10Vをご使用のお客様からのお問い合わせも無いため、最近の状況は把握できておりませ


Q4.アンモニア測定にドライを使用していますが、手動点着とピペットで検体をはきだした場合、どのくらいの誤差が生じますか?

A4.機器のインキュベータに汚れがなく、正確に10μLをスライド中央に手動点着した場合と自動点着との差は添付文書記載の性能内となります。


Q5.既に説明があったかもしれませんが、キャリブレーションがCRP以外は不要な理由を教えていただけないでしょうか。

A5.富士ドライケムはCRMなどの標準物質を直接測定することは出来ないため、製造元が所有する液体法機器で標準物質を用いてトレーサビリティの確認を行い、その機器とドライケム機器でヒト検体を測定し、正確度を伝達しております。スライド製造時に較正している為、お客様がご使用の際は、QCカードによるロット補正のみで使用が可能となっています。


Q6.アンモニアは採血からどのくらいの時間測定可能ですか?

A6.検体により異なるため一概には言えませんが、社内実験例では、EDTA全血を氷冷した場合の「採血直後」と「30分後」で大きな差は見られませんでした。採血後すぐに検査できない場合は、EDTA採血管を氷水中で保存し、30分以内の測定をお勧め致します。(氷冷30分以内であれば問題ない、という事を意味するものではありません。)


Q7.ドライケミストリーのアンモニアの経時上昇についてです。低値の検体と高値の検体では、どちらの上昇が速いですか?

A7.検体や抗凝固剤の種類、放置環境等、条件によって上昇度合いが異なる場合も有るため一概には言えませんが、高値検体の方が上昇の度合いが大きい傾向にあるように思われます。


Q8.初歩的な質問ですみません。乾式のご講演で、希釈されないので共存物質の影響を受けやすいとのことでしたが、希釈されると影響を受けにくくなるのはなぜですか?ターゲットも共存物質も両方希釈されるのに…と不思議に思っています。

A8.共存物質は直接測定系に干渉して測定値に影響を及ぼすものであり、ターゲットが希釈されても、測定系に対する共存物質の割合が少なくなれば、その影響は低減されると考えられます。

2023年05月27日
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