研修会時の質問【令和5年5月20日分②】
【講義名】乾式臨床化学分析装置の仕組み
【回答者】高吉 尚子 先生(富士フイルムメディカル株式会社)
Q1.スライドにありました「マトリックス」とは何か、について教えてください。
A1.測定する試料中の、測定対象物以外の物質が測定に際して測定法に干渉し、何らかの影響をもたらす現象の総称。ドライケミストリーだけでなく、液体法試薬でも発生する。(菅野剛史先生、第22回日本臨床化学会冬期セミナー抄録集より引用)
Q2.ドライケムは人間用と動物用は、中身は同じものですか?
A2.基本的には同じですが、全項目同一ではありません。
Q3.ドライケムAU10Vを使っています。プロゾーン現象などは起こり得ますか?
A3.起こり得ないと断言できませんが、経験がありません。尚、約4年前より動物関連の製品は別会社で取り扱う事となり、それ以降、AU10Vをご使用のお客様からのお問い合わせも無いため、最近の状況は把握できておりません。
Q4.アンモニア測定にドライを使用していますが、手動点着とピペットで検体をはきだした場合、どのくらいの誤差が生じますか?
A4.機器のインキュベータに汚れがなく、正確に10μLをスライド中央に手動点着した場合と自動点着との差は添付文書記載の性能内となります。
Q5.既に説明があったかもしれませんが、キャリブレーションがCRP以外は不要な理由を教えていただけないでしょうか。
A5.富士ドライケムはCRMなどの標準物質を直接測定することは出来ないため、製造元が所有する液体法機器で標準物質を用いてトレーサビリティの確認を行い、その機器とドライケム機器でヒト検体を測定し、正確度を伝達しております。スライド製造時に較正している為、お客様がご使用の際は、QCカードによるロット補正のみで使用が可能となっています。
Q6.アンモニアは採血からどのくらいの時間測定可能ですか?
A6.検体により異なるため一概には言えませんが、社内実験例では、EDTA全血を氷冷した場合の「採血直後」と「30分後」で大きな差は見られませんでした。採血後すぐに検査できない場合は、EDTA採血管を氷水中で保存し、30分以内の測定をお勧め致します。(氷冷30分以内であれば問題ない、という事を意味するものではありません。)
Q7.ドライケミストリーのアンモニアの経時上昇についてです。低値の検体と高値の検体では、どちらの上昇が速いですか?
A7.検体や抗凝固剤の種類、放置環境等、条件によって上昇度合いが異なる場合も有るため一概には言えませんが、高値検体の方が上昇の度合いが大きい傾向にあるように思われます。
Q8.初歩的な質問ですみません。乾式のご講演で、希釈されないので共存物質の影響を受けやすいとのことでしたが、希釈されると影響を受けにくくなるのはなぜですか?ターゲットも共存物質も両方希釈されるのに…と不思議に思っています。
A8.共存物質は直接測定系に干渉して測定値に影響を及ぼすものであり、ターゲットが希釈されても、測定系に対する共存物質の割合が少なくなれば、その影響は低減されると考えられます。